2018年03月22日

【惜別】

「男と女」の画像検索結果




逸美は、弘樹の話に引き込まれていった。


「彼は。本当に夢を追いかけている人なのね。」


逸美は思った。


弘樹は、「ここのパーティは、つまんないから抜け出そうよ。」


逸美は、無言でうなずいた。


その夜、二人は結ばれた。




弘樹の立ち上げた会社に、O先輩が加わった。


弘樹が会社を辞めたことを知って、自分の可能性を確かめたかのだ。


彼が加入したことで、会社の業績が飛躍的にアップした。


彼が中心に開発した、スマホのアプリと新感覚のゲームが、爆発的にヒットした。


弘樹は、得た収入を投機に使い。

利益を増やした。


新たな会社作り、会長に収まった。


会社は、急激に伸び、今や時の人となった、と同時に仕事が極端に忙しくなった。


まさしくCatch The Dreamであった。


うまく行きだすと、優秀な人材が次々参入して、会社は大きく膨れ上がった。




いつしか、弘樹と逸美は一緒に暮らしていた。


彼が、帰ってくるのはいつも明け方である。


帰ると寝ている逸美を抱いた。


仕事のストレスを一気吹き出すように激しく彼女を抱いた。

何回も。


彼女は、何度もイった。

それと同時に女の歓びを知った。


朝食を一緒に食べて、逸美は、出勤し、弘樹は仮眠を取った。




逸美もチーフデザイナーとして脂が乗ってきた。


パタンナーも優秀な人材が入ってきて、彼女のデザインの幅が広がった。


雑誌の取材も増えてきて、業界でも知られるようになってきた。


この時が彼女の絶頂期だったのかもしれない。


当然会社も業績が上がり、中堅アパレル会社から大手の会社になっていた。


会社内で異動があり、会社の創業者である現社長が会長に、彼の右腕としてここまで引っ張ってきたデザイナーの夏木優子が新社長になった。


それと同じく逸美もチーフデザイナーからデザインプロデュサーに昇格した。


実質デザイン部門のトップになった。

新チーフデザイナーを外部からまだ無名の小川由美が就任した。


この人事に逸美は、驚きと共に新社長の狙いが分からなかった。


小川由美は、夏木優子が発掘しヘッドハンティングしたのだ。


暫くして、逸美にも理解できた。


小川由美は、天才的デザイナーであることに。


会社の売上はますます伸びたが、逸美の影が薄くなった。


実際デザインする機会は、管理職であるからなくなった。




そんなとき、フランスのP社から誘いがあった。


しかし、フランスに行かなければならない。


デザイナーとしては、夢を掴む大きなチャンスである。


女としては、弘樹と別れることになる。


彼女は、迷った。弘樹に相談した。


「君の本音は、どうなんだい。

デザイナーとして最高の場所に登れるチャンスなんだよ。


チャンスは、待っていては来ないんだよ。

チャンスは掴むものなんだよ。君の夢はどうなんだい。」


「わかっている。わかっているから辛いの。弘樹と離れたくない。」


「僕のために君のチャンスを潰したくない。」


「君は、向こうに行ってチャンスを掴んで夢を叶えなよ。」


「僕のことなんて、ちっぽけなことだよ。」




逸美は、会社を辞めて、フランスに行くことに決めた。


日本には、戻らない覚悟であった。


ただ思い残すことは一つ。


「弘樹、幸せになってね。」


逸美はそう呟いて、泣いた。


泣きながら、搭乗した。


逸美の惜別の思いを残したまま。




(了)


Masayuki Simomura 作

PS
長い間、私の作品に付き合せまして
すみませんでした。
今回を持ちまして、終わりにしたいと
思います。
私が病気で伏せているとき
将来をかんがえて
筆を取ってみました。
アイデアがどんどん湧いてきて
ショートショートながら
十数本を一気に書き上がました。
今回の連作もエピローグまで、
構想があり、最後のシーンまで
浮かんでいたのですが、
星新一の作品を初めて読んで
愕然となりました。
相手はプロですが、
私の作品が子供の作文のように
思えてなりませんでした。
それからは、アイデアが全然浮かばなくなり
いつしか小説家の夢は夢で終わったわけです。
まだ世に出してない作品もいくつか
ありますが、今回、このブログで
何人かの方に読んでもらっていたことは
ありがたいと感謝申し上げます。
今、HPを作成中で、しばらくは
お休みさせて頂きます。
このブログを使いますので
興味のある方は読んでください。
お願いいたします。


posted by siimo at 21:33| Comment(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月21日

【出合い】

「出会い」の画像検索結果


逸美は、昨日彼と別れた。

一緒に暮らし始めて4年長い春だった。

出合った頃は、あんなに燃え上がったのに、最近では、喧嘩ばかり。

相手の嫌な所が目に着いて、イライラしたり、外泊するようになってきた。

彼女は、ずっとからからのプロポーズを待ち続けていた。

しかし彼は、優柔不断で、金遣いも荒く遊びも派手で、時々彼女に金も借りていた。

他に女が出来たみたい。

なんとなく分かる女の勘というやつだ。

彼に問い詰めた、最初は否定していたが、逸美のしつこい突っ込みに、とうとう白状した。

最近出来たらしい。

逸美より年下のどこかの会社の事務員をしているらしい。

彼は製薬会社のプロパーをしていて、あちこち回っている、長身で、ハンサムだから言い寄る女性もたくさんいるらしい。

しかし、彼は、仕事が長続きしない。

逸美と暮らしてから3回も職を変わっている。

それも不安だった。

別れは、彼女から切り出した。

すんなり彼も承諾し、この部屋から出て行った。

彼女は、静かに泣いた。

本当は、彼の事をいまでも愛していたから。


逸美はアパレル会社に勤めていた。

デザイナーとして円熟期を迎えようとしていた。

彼女のデザインした洋服は、けっこう評判がよく、マスコミにも取り上げられるようになってきた。

それに伴いチーフデザイナーに昇格し、仕事面では絶好調だった。

マンションも引っ越した。

4年の想いでの詰まった部屋には、住めなかった。

新しい住まいは、都内の新築マンションで高層階だった。

デザイナーらしい内装で、調度類も彼女のセンスの良さが伺える。

彼女ももう30歳になっていた。

暫くは仕事に打ち込もう。

自分の夢が叶ったのだから。

逸美はそう思った。


ある日徹夜をしてタクシーで帰った。

偶然もう一台タクシーが止まった。

中からTシャツジーパンの若い男が下りてきた。

二人は軽く挨拶をしてエレベーターに乗った。

階が同じなのである。

逸美は身構えた。「痴漢かも。」

男は、まるで彼女に関心が無いようだった。

25階のドアが開き、彼は、先に下りてすたすた歩いて行った。

彼が入ろうとした部屋は、逸美の隣の部屋だった。

逸美は慌てて声をかけた。

「はじめまして、この度隣に引っ越してまいりました。

山本逸美と申します。

何度も御挨拶に伺ったのですが、いつも御留守で、挨拶が遅れましてすみません。」

と名刺を渡した。

「ごめんね。いつも帰えるの今頃だから、上杉弘樹と申します。宜しくお願いします。」

彼も名刺をくれた。


弘樹は、部屋に入ると名刺を見て

A商事デザイン部チーフデザイナー山本逸美。へえーデザイナーなんだあの姉さん」

と言いつつ風呂に入った。


逸美は、部屋に入ると名刺を見て

「株式会社Catch The Dream 代表取締役 上杉弘樹 へえー社長なんだあの坊や」

と言いつつ風呂に入った。


ある日、取り引き先の会社のパーティがあった。

彼女も出席していた。

「山本さん」後から声が掛った。

上杉弘樹だった。

タキシード姿だったので一瞬誰かわからなかった。

意外と長身で、いい男なのだ、彼女はドキッとした。

「山本さんもこのパーティにいらっしゃってたのですか。」

「あなたこそどうして?」

「ここの社長が僕の遠縁で、僕の会社の出資者の一人なのです。」

「上杉さんの会社ってどんな会社なの」

IT関係の会社です。以前勤めていたB工業を辞めて、去年作ったのです。

スタッフ6人の小さな会社ですが、ソフトの開発 コンサルティング web制作なんでもやりますよ。」

B工業って大手じゃない」

「サラリーマンは結局、会社の歯車じゃないですか。

どこまで行っても、でも僕は自分の好きな事をやりたかったんです。

誰にも命令されず、お客様に必要とされる会社をつくりたかったんです。

だから社名もCatch The Dreamにしたんです。」


「お幾つですか」

「僕ですか。今年で26になります。」

彼女は、どんどん彼に惹かれていくのが分かった。

胸がときめいていた。

彼はいつまでも自分の夢を語っていた。

逸美は、弘樹の話に引き込まれていった。


(了)


Masayuki Simomura 作

posted by siimo at 20:45| Comment(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月20日

【愛憎】



山本逸美は、アパレル会社のデザイナーをしていた。

美大を出て4年目。中堅どころで、バリバリ仕事をこなしていた。

彼女の才能は、誰もが認めるところで、途中何回もヘッドハンティングされていた。

でも彼女は、それらを断った。チーフデザイナーの夏木優子のデザインテクニックを

どうしても自分の物にしたかった。デザイナー魂がそうさせていた。


ある日、同窓生の結婚式があり、2次会までは出席していたが、何か急に詰まらなく成り途中で帰ってきた。彼女の幸せそうな顔が憎たらしく見えてきたので、帰ってきた。

いつものバーに立ち寄った。いつからだろうこの店に来るようになったのは、確か友人がこの店を知っていて、連れて来て貰ったのが、最初だと思う。

シックな木目調の内装で、静かにJAZZが流れている。カウンターに座って、ロックを飲む。バランタインが彼女のお気に入りだ。客層も上客に見えるし、静かに、瞑想にふけるように酔って行く自分に酔っていた。


その日も同じカウンター席に座って、静かに飲んでいた。バランタインの芳醇な香りと優しい舌触り、そして喉越しの良さ、いい酒はこうでなくっちゃ。と心の中で思っていた。

「お一人ですか。」

「ええそうですけれど。」

「そうしたら、暫く僕と飲むのを付き合ってもらえませんか。」

「構いませんが。」

「有難うございます。今日は、僕に奢らせて下さい。」

「まあ、有難うございます。」

男が急に隣へ座って来た。よく見るとイケメンで逸美好みの顔立ちだった。

「お幾つですか。」

「僕ですか。26です。」

同じ歳か。それからかれの話が始まった。

仕事の話、逸美の事、そして自分の夢の話を延々と話した。

逸美は、男の夢の話を聞くのが、好きだった。夢のない詰まらない男が多すぎる。

ただ逸美は、男性経験が少なすぎた。中高大学と全部女子校だった。

男性に接する機会が、極端に少なかった。ある程度男性と接していると、この男の夢の話に毒があることに直ぐに気付いたろう。


気が付いたら、朝だった。逸美は、ベッドのなかで、裸で寝ていた。

お酒の所為もあるが、結婚式のやっかみも影響したと思う。

逸美は、昨夜は激しく燃え、何度もイッた。

その日から逸美は、その男と同棲し始めた。むしろ。男が転がりこんできた。

暫くは、上手く行っていた。逸美も結婚を意識し始めた。

仕事は順調だった。徹夜が続く時もあった。逸美はヘッドハンティングにあっても断る

理由の一つに、優秀なパタンナーがいた。名前を谷口逸美といい同じ名前だった。

そのため社内では、W逸美と呼ばれていた。実際、仕事を一緒にすると、逸美のデザインイメージ通りの作品が出来上がった。逸美はパタンナーの逸美の才能に舌をまいた。

彼女がここまで来られたのも、パタンナーの逸美の功績も大きかった。一度、目立たないパタンナーのために家で鍋パーティをしたことがある。勿論、谷口逸美のそこにいた。

ただ男も一緒にいて、場を盛り上げてくれた。


逸美は、男の夢は、ウソである事に今頃気づいた。でも愛していた。それが心の支えだった。転職もたびたび繰り返し、そのうち定職もつかないようになってきた。喧嘩が絶えない様になってきた。彼女に金も借りるようになってきた。外泊も多くなってきた。そんな時に限って、逸美をいきなり抱いた。激しいキスが、タバコと酒の匂いで辟易していた。

シャンプーの匂いが毎回違う事に気づいた。その奥に女の匂いを感じた。女の勘で浮気をしてと思った。しかし、逸美の身体は何度もイッた。心の奥で愛していたから。

ある時から同じシャンプーの匂いが続いた。他に女が出来たと思った。

彼を問い詰めた。激しく問い詰めると彼の口から信じられない女の名前が出てきた。

谷口逸美である。逸美は、錯乱した。最後の壁ががらがらと崩れていくのがわかった。

もうダメだと思った。結婚、何それという思いだった。

会社で逸美を問い詰めようとしたら、彼女は、3日前に辞めて、いまは、どこかの会社の事務員をしているらしい。逸美が海外出張している間だ。裏切られた。彼女は落ち込んだ。

「もう別れよう。」そう思った。


(了)


Masayuki Simomura 作

posted by siimo at 20:26| Comment(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする