2018年03月19日

【プロローグ】

「ラットレース」の画像検索結果


上杉弘樹の家庭は、裕福であった。

父は複数の会社の社長をやっており、小さい頃から何不自由なく育った。

パソコンも小学校になったら与えてもらい、それ以来パソコンの虜になった。

彼は、小中高と私立の有名進学校に進み、国立T大学を卒業、B工業に入社と云う

絵に描いたようなエリートコースを歩んでいた。

B工業では、研究施設に入りたかったが、SEプログラム開発室に配属された。

SEプログラム開発室も会社内では、エリート部署ではあったが、

彼としては、最初の挫折感を味わった。子供のころからパソコンをイジッテいたとしても所詮大学出の新人である。しかし、会社は、彼に仕事を与え期限までに納品するよう指示がでた。

会社も考慮して、最も簡単な仕事であったが、彼にとっては、重荷であった。周りの所員は、出来て当り前と思っているので、誰も教えてくれなかった。天狗になっていた。自分を恥じた。それからかれは、参考書を買い漁り、勉強した。時には徹夜になることも、会社に泊まり込むことも何度かあった。開発室所員全員が終電間際までほぼ毎日残業していた。それからSEの勉強をしながら、仕事をこなして行った。納期までになんとか納めたが室長のチェックが入り、やり直しになった。そこで彼の2回目の挫折を味わった。

しかし、彼は諦めなかった。中高とラグビーをやっており、ネバー・ギブアップの精神は

彼のの身体の中に染みついていた。初めて、先輩に相談した。O先輩である。大学も同じという事で、質問をした。彼は、弘樹の作った報告書を見て、

「間違いではないが、随分遠回りをしているね。これだとミスを起こす遠因になるよ。

例えば、ここ、ここをこうやればスムースで美しいでしょ。」

「ありがとうございました。」彼は、礼を言うと

「なるほど、プログラムは、完成度が高いほど、美しく見えるのか。」

それからは、彼はもう勉強をし、分からない所をO先輩に相談した。

彼の実力はみるみる上達し、やり直しの報告書は、スムースに室長の印がもらえた。

「よく頑張ったね。最も再提出は想定内で、納期には余裕を持たせていたがね。」

しかし、ここで勉強した事とO先輩を得た事は後に大きく役に立つ事になる。

彼にも彼女はいたが、なにせ忙しく、メールのやり取りしか出来ず、いつしか

彼女からのメールも帰ってこなくなった。人生初めての振られ経験だった。

いくつかの挫折と猛勉強の2年間だった。

次の年度、異動になった。彼としては、晴天の霹靂であった。ここでもう少し勉強したかった、O先輩も異動になった。研究所への異動である。

彼は、営業第1課で主に国内のメーカー、商社、官公庁が相手である。

しかし、実態は、苦情で怒られる事と、政治家、官僚の夜の接待である。

実際今朝もA商社担当部長から直々に、お怒りの電話があった。

直ぐに課長と二人で駆け付けたが。

「天下のB工業が、なにしてますの。お宅のプラグラムを入れても全然動きません。

こんなことなら、P社もあるし、S社もやっているから、契約破棄しても構いませんよ。

こちらも納期に追われますので。」

「誠に申し訳ございません。プロクラムを持ちかえって、早急に調べますので、今一度

チャンスをお願いします。それとまさかとは、思いますが、プログラムを御社の方で

改竄されたといことは、ございませんか。当社の製品は、スパイ防止のため、プログラムを改竄すると、プログラム全体が消滅するようになっておりますので。」

「そ、そんなこと内がする訳ないだろう。失敬な。兎に角早く訂正してくれ。」

帰り道、A商社は、T国と親密な関係であると云う噂は、以前から知っていた事と

このプログラムは、M重工業が、秘密裏に防衛省から依頼された新型純国産ミサイルの頭脳に当たる部分だと説明してくれた。一度ロックオンをすると360度ジャイロを利かし

絶対当たるらしい。自分もプログラムにさっと目を通したが、落ち度は、見当たらなかった。課長は、戻るとすぐに防衛省に連絡を取っていた。公安が動くらしい。我が社は。直ぐにA社との契約を破棄した。違約金など安いものらしい。

今度は、野党の大物議員の秘書が訪ねてきた。A社の契約破棄についてである。

部長が対応に出た。我が社の製品に落ち度はない。改竄されている可能性が高い。

こちらは裁判に掛けてもよいと、思っている。また、公安が動くらしい。政治献金をさせていただくと回答したら、なにも言わず、帰った。

弘樹は、いやになってきた。こんな事自分でなくても出来るだろう。

なんの為に毎日、夜遅くまで、資料作りをしているのだろう。何のために働いているのだろう。こんなはずではなかった。これでは、何時までたっても会社の歯車でしかない。

例え社長になっても同じだ。学生時代持っていた夢を忘れてしまったのか。

彼は翌日辞表を提出した。


(了)


Masayuki Simomura 作

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2018年03月18日

【休息】

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橋本 純一21


都内の某有名私立大学4年生


ラグビー部キャプテン




就職は、まだ決めていない。


3年の時点で数社内々定は貰っている。




しかし、自分にとって就職することが疑問に思えてきた。


一生サラリーマンで終えたくないと思い始めてきたのだ。


イヤミな様だが、いずれも1流企業だ。




これからの日本を考えたとき、企業に就職して、定年を迎えて、年金を貰えるなんて本気で思っている能天気な奴は、いないだろう。


好むと好まざるとに関わらず、日本も世界の潮流に巻き込まれて、大きく変化していくだろう。日本も大きく舵を切る時代になってきた。




そんな中、ダニエル・ピンクは、フリーエージェントの社会が来ると言っている。


企業から個の時代に移ると予言しているのだ。


だから今のうちに起業するか、就職するか悩んでいる。


じゃ、何で起業するかだ。インターネット関係か。


ここも流れが速くて、今日新しくても、明日には古い情報となっている事が多い。


しかし、当たれば大きいし、ハードルが低い、だから誰でも参入出来る利点がある。




就職しながら、副業で始めて、目処が立ったら辞めて本業になるという都合のいい選択もある。




決断力のある純一も悩んでいる。本音は、今からでも起業したい。


でも、何で起業するかと、資金がない点に悩んでいる。




ある日、同じ大学の理工学部の同級生とたまたま学食が、同じテーブルになった。


そいつが、同級生であることは、こちらが声を掛けるまで知らなかった。


名前は、木村卓也。名前を聞いて「ホント?」と聞いてしまった。


「いつも言われるんだ。女子学生には、馬鹿にされるし、いい迷惑だよ。」


「就職すんの。」と聞いた。


「いや、大学に残る。研究対象が、見つかったから。」


「どんなの」


「エネルギー問題を一気に解決出来る奴。」


「へえ、どんなの教えてよ。」


「難しいけれど、簡単に言えば、植物の成長速度を電気エネルギーに変換して、・・・・・・」


「後の方は、分からなかった。」


彼は、それに1時間くらい話した。


「・・・という理論なんだ。」


「えっえー凄いねー。それで世界のエネルギー問題も一気に解決だね。」


と適当に誤魔化した。


「そうなんだ。これが、発展途上国にはお宝が一杯だから、最貧国が、一気に富裕国になる可能性もあるということさ。」


「それって、どんな植物?」


「わかんない。」


「これから探す。候補はたくさんある。」


「実現の可能性はあるの?」


「ある。」とはっきり言い切った。




純一は、ピンと閃いた。


「あのさ。俺とタッグ組まない。」


「企業化してさ、世界中に売るんだよ。」


卓也は、躊躇した。


「商売のために、研究しているんじゃないんだ。」


「でも、お前のその研究が、成功したらどこかの大手が、買いにくるぜ。」


「エネルギーだから。巨万の富を生むからな。」


純一は、子供がおもちゃを手にしたかのように目をキラキラさせながら説得した。


「やろうよ。面白そうじゃん。うまく行くんだろ。」


「あー上手くいくさ。俺の研究だから。」


「じゃあ決まった。早速、植物を探しに行こうぜ。」




純一は思った。


「上手くいくかどうかを今心配しても意味がない。やってダメならそれでいいじゃん。


一度っきりしかない人生だもの、夢に賭けてみたい。」


ふと、今まで走ってきた自分の人生の休息みたいに気が楽になった。


「問題解決を図るよりも、新しい機会に着目して創造せよ」


ピーター・ドラッガーの言葉が浮かんだ。


「ピータードラッガー」の画像検索結果


(了)


Masayuki Simomura 作
posted by siimo at 20:43| Comment(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年03月17日

【遠距離恋愛】

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志賀直樹は、A商事の大阪支社に転勤になって2年が経つ。

直樹には、恋人がいた。

吉野礼子24歳、直樹より2歳年下だ。

合コンで知り合った。

たまたま隣の席に座った。

美人というよりは、男好きする顔立ちである。

彼女は、N物産の経理をやっているそうだ。

「お名前聞いてよろしいか。」

「はい、吉野礼子と申します。24歳で、N物産の経理部におります。」

N物産て大手ですから、忙しんじゃないですか。」

「いいえ、私は、主に雑用ですから、コピー取りとか、資料作成の手伝いとか

そんな感じです。お茶汲みは、基本的に禁止ですから、お客様が見えた時だけ

順番制でやっているんです。」

「僕は、志賀直樹といいます。A商事の営業部にいて、毎日飛び回っております。」

A商事の方が、大手じゃないですか。海外勤務なんかもあるんですか。」

「そうですね。可能性としては、ありますね。海外に15社支店がありますから。」

「今は、中国が多いかな。」

「僕も時々中国へ出張に行くんです。」

二人は意気投合し、メアドも交換し、次のデートの約束もした。


何回かデートを重ねるうち、男女の関係になっていた。

どちらかというと、直樹の方が積極的であった。

あるとき、ふと直樹は気付いた。

デートの日はいつも木曜日が多いことに。

「俺たち、いつも木曜日にデートが多くないか。」

「そうかしら、わからなかったけれど、ただ土日は、サークルとかスクールに通っているので、今のところダメなのね。あと皇居周りのランニングとかしているから、結構1週間予定がつまっているのよ。」

「だからじゃない。」

直樹は、その時は納得した。

それに彼女はあまり私生活を話したがらないことにも気付いた。

熊本から上京して、こちらの大学を出て、N物産に就職したことぐらいだ。

直樹は、聞きたかったが、つまらん男と思われるのが嫌なので、敢えて聞かなかった。


直樹は、大阪支社に転勤になった。

「俺、大阪支社に転勤になったよ。」

「えー、いつまで。」

「早くて3年遅くても5年かな、それで本社に戻れば、係長かな。次は、海外転勤で

アメリカなら取締コースだね。」

「本社に戻れなければ。」

「まっ、コースから外れたということで、地方の営業所周りかな。」


それから遠距離恋愛が続いた。

金曜の最終で、東京に着き、日曜の最終で、大阪に帰るパターンが続いた。

礼子は、僕のためにサークルもスクールも辞めたと言っていた。

二人で、彼女のマンションで過ごすことが多かった。

DVDを見たり、ゲームをやったり、後はセックス。彼女は燃えた。

帰る時は新幹線のプラットフォームまで送ってくれた。

彼女は泣いていた。

長いキスをした。

発車のベルがなるまで。


普段は、メールかラインで会話をしていた。

しかし、だんだん回数が減ってきた。

直樹も忙しかったから、気付かなかったけれど、彼女からの返事が来なくなった。

今になって思えば、木曜日しか会えないなんて変なことぐらいわかるはずだった。

思い切って、N物産に連絡した。

「お調べしましたけれど、当社では吉野礼子という職員はおりません。」


(了)


Masayuki Simomura 作

posted by siimo at 19:52| Comment(0) | ブログ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする